そのボード、僕が積んでおきます。

たくさんの電子工作基板が積みっぱなしになってるので、頑張って工作しようとしていますが、どんどん溜まっていっております。

ニコ技深セン観察会2016春に参加してきたよ

今回は少し毛色を変えて、先日行ってきた深センのレポートを書きたいと思います。
(※このブログエントリーではツアー参加者でシェアした写真のアルバムから、他の方が撮影した写真も使わせていただいております。その場合は写真の下にキャプションを入れております。問題のある写真がありましたら外しますのでご指摘ください。)
 
 少し前の話になりますが、2016年4月13日~15日に開催された「ニコ技深セン観察会」に参加してきました。ニコ技深セン観察会はチームラボの高須正和さん(@tks)が中心となって、深センに興味を持った人たちでツアーを組んじゃいました、というようなイベントで、深センの幾つかのメイカーズスペースや、ハードウェアスタートアップ、工場、そしてもちろん(世界一と言われる)電気街など通常の観光では行かないような「濃い」体験ができるもので、既に何度か開催しています。今回の参加者の中にも、過去のツアーにも毎回参加している人などもいて、参加者の満足度の高さが伺えます。
 
このツアーに興味を持った人はまずはこれを読むことをオススメします。

 この本を読むと、きっと次の観察会に参加したくなるに違いありません。

 
また、今回のツアーに参加した方のレポートはこちらにまとめまれています。
それぞれの方が、それぞれの視点でまとめているので、読み比べてみると面白いと思います。
 
 今回僕がこのツアーに参加した個人的なテーマは、「ハードウェア系スタートアップの様々なストーリーの中で深センが登場するがそこでは一体何が起こっているのかを知る」という事でした。
よく見かける話として、
  • Kickstarterなどで調達した後、プロトタイプまではうまく行っても深センでの量産段階でプロジェクトが遅延する
  • 深センには色々なガジェットが集中している
  • 深セン発の面白いハードウェアスタートアップが出てきている
これらの話の中で登場する「深セン」は、量産工場という文脈であるとともに、違法な匂いもしつつ、そしてとてもイノベーティブな場所でも有ります。一体、深センとは本当はどういうところで、一体僕たちは深センにどんなことを期待できるのでしょうか。

 

まずは全般的な印象や感想から。
 

・高須さんが成長を読み違うほどの速い成長

 高須さんは何度も深センを訪れているはずですし、今回訪問した幾つかの企業とは定期的にコミュニケーションもしているはずです。企業の紹介をしてくれる際に必ず「前にこのくらいの人数って言ってたから、今はこのくらいになってるはず」といってくれるのですが、多くの企業がそれ以上に成長をしています。成長市場の中での成長というのがどれほど有利なのかを物語っています。
 

・街のいたるところに「創客(メイカーの意味)」という文字がみられる

 街全体としてメイカーの創出に全力を上げている事がわかる。というよりも、国をあげて深センをメイカーの聖地にしようと言う流れのようだ。そもそも香港の加工貿易で発展していった深センですが、街の発展とともに人件費も上がり、単なる下請け工場としての存在ではいられなくなってしまっているのが現在。メイカーによるイノベーションと、それによる付加価値の高い製造業への変化を模索している、まさにその段階というところです。
 

・女性が多く活躍している

 訪問した企業でも、電気街でも、もちろん食堂などでも、非常に多くの女性が働いています。電気街の売り子さんなんかは、もしかしたら女性の方が多かったかもしれません。日本では考えられない比率です。女性が多く仕事をしていますので、女性に対する治安は悪く無いように感じました。また、これは女性に限りませんが、「働けば働くだけ稼げる」と信じられる環境ですので、みなさん本当に熱心に働いている印象を受けました。日本の高度経済成長のころはきっとこんな感じだったんでしょう。
 

・英語通じない

 ほとんどの店舗で、英語は使えません。「ハウマッチ?」くらいが限界で、数字すら英語では受け付けてくれません。お店でのやり取り用にメモ帳などを持ち歩いて、文字で書いてしまった方が早いです。また、全体に英語を併記してくれているところは少なく、ヘタすると公共交通機関ですら英語表記がありません。と、ここまで書いたらわかると思いますが、日本もほぼおなじ状況です。海外から日本に来ている人の不便さを味わうことのできる貴重な機会だったと思いました。日本国内ももっと英語表記増やさないと来日した人が不便だよ!
 

・クレジットカード使えない

 また、クレジットカードがほとんどのところで使えないようです。僕はそう聞いていたので、一定の現金を用意していっていたので結局クレジットカードが必要になるシーンはありませんでした。たくさんガジェット買いたい人は多めに現金を用意したほうが良いでしょう。逆についつい買い過ぎちゃう人は、程々にしておけば勢いで買っちゃうことも少ないかもしれません。
現金無くなった時どうするかですが、手数料や料率考えても ATMでクレジットカードのキャッシングを利用するのが一番良いようです。ただし、VISA・MASTERが使えるATMと使えないATMがあるようなので、とりあえずギャンブルみたいなものですが、試してみるしかないようです。使えるATMを見つけたら、そこを覚えておくと便利です。
僕はExchangeで日本円を元にして持っていましたが、この場合100元札を渡されることが多いです。ただ、中国では100元の偽札がとても多く出回っているようで、100元札を使うと一言二言言われた後、まじまじとお札を確認されたりします。これはもうそういうもんだと思って気にしないのが一番です。
 

民度が十分に高い

 日本とは文化が違うので、例えば電車を待つ時も日本みたいにまっすぐに並んだりはしませんが、とても混雑したホーム・電車でも、乗り降りは非常にスムーズに行われますし、日本のラッシュのように体当りしてきたり、舌打ちしたりする人はいません。また、街なかでも、非常に多くの人が行き交い、多くの電動自転車が走っていますが、「邪魔だどけ、てめぇ死にてえのか!」みたいな罵倒は全くありません。クラクションは鳴らされますが、日本のような攻撃的なニュアンスはありません。このあたり、民度の問題というよりも、日本がちょっと殺伐としすぎてるのかもしれません。
 
 
では、以下時系列に沿いながら、思ったことなどを綴っていきます。
 

Day.0(4月12日)

 
この日は日本から深センへの移動日です。
 
 羽田-香港を飛行機で、その後バス(香港の空港→上水)と電車(上水→羅湖)を乗継ぎ、陸路で中国入りしました。陸路で国境をまたぐのは初めてだったので、良い経験になりました。びっくりしたのは、イミグレを通った瞬間に、auから中国入りのローミング案内SMSが届いたことです。本当に通った瞬間だったのですが、どうなっているんでしょうか。国境あたりの携帯電波事情に詳しい方いらっしゃれば教えて下さい。

 

 深センの地下鉄には日本で言うところのSUICAPASMOに相当するICカード「深圳通(シェンジェントン)」があります。カード型もあればキーホルダーみたいなものもあるということで、とりあえずこれは買ってみないといけない、ということで、深センに入ってすぐに購入しました。
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【キーホルダーのようなタイプのもの】
 
 深センの地下鉄では、入場するのに手荷物のX線検査が必須です。逆にボディチェックはないのですが、毎度毎度行わなければならないのでちょっと面倒なのですが、セキュリティ上適切な気もします。日本においても地下鉄サリン事件が有りましたが、通勤ラッシュ時の地下鉄でテロがあったら、被害は甚大です。今時はこのくらいのセキュリテイでもしょうがないご時世なのかもしれません。
 
 今回の宿は、「ホワチアーン プラザ ホテル(華強広場酒店)」という、世界一の電気街といわれる「華強北(ホワチアーンベイ)」のどまんなかのホテルでした。非常に大きく綺麗なホテルで、1Fにはスターバックスも入っています。
 ホテルの支払いはクレジットカードで、しかも既に支払い済みだったのですが、それでもチェックイン時にデポジットとして2000元(およそ35千円)を求められました。中国のホテルではチェックイン時にデポジットを求められることが多いです。このホテルではクレジットカードが使えましたが、クレジットカードはNGのホテルも多いと聞きますので、深センに行くときは、ホテルのデポジットが最悪現金でいるかもしれない、ということに注意してください。
 
 この日は、前日入りした参加者で集まって食事をしようということになっていたのですが、待ち合わせの時間まで少し有りましたので、電気街を少し歩いてみることにしました。
 
 ホテルのすぐ隣が6F建ての大きな電気店なので、とりあえずそこに行ってみましたが、簡単に言うと、秋葉原のガード下の電気店のような規模のお店が、秋葉原ヨドバシのフロアいっぱいにぎっしり入っている感じです。中でも、5Fと6FはLED専門店ばかり。ものすごい数のLED専門店で、本当にLEDしかなくてビックリします。目立つのでテープLEDばっかり売っているように感じましたが、じっくり観てみると色々なタイプのLEDを取り扱っていることがわかります。ここにはDay.3にもう一度来ることになります。
 また、トイドローンや2輪ホバーボードなどは、日本のAmazonで買える並行輸入品の金額とそう大きな差はないように感じました。アクチュエーターの入ったデバイスに関しては、びっくりするほど安いという印象は受けませんでした。そもそも量産効果での価格優位を出しにくい領域ですが、これから伸びてくれば期待できるようになるかもしれません。
 
 

Day.1(4月13日)

 朝から大雨です。強い雨がふると、下水の処理能力が足りていないらしく、道路がすぐに冠水します。この日も朝から下水が溢れて道路が冠水していました。そんな中でも、車も人も、平然と通勤しています。
 
 今日から、ツアーは基本的にツアーバスでの移動です。バスの中での移動での感想や意見交換も、自分が気がついていなかった点に気づかせてもらったり、とても有意義でした。

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【座席順はその時々で柔軟に変化。色々な方とお話し出来ました】

 

Seeed

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 1件目の訪問先は「Seeed」です。僕としては「Seeed Studio」の方が通りがいいのですが、現在はSeeedという社名に変更したようです。電子工作好きの方であれば、「GROVEキット」や「Xadow」などで名前を聞いているでしょう。また、オンラインからオリジナル基板を注文できる「FusionPCB」のサービスを行っているのも、ここSeeedです。

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 僕の知っているSeeedは、こういったハードウェアスタートアップをのためのデバイスを多く作っていたり、サービスを展開している企業という印象だったのですが、オフィスに伺って話を聞いてみると中国国内向けで教育向けのキット販売なども行っているとのこと。売上の比率としてもこちらもかなり大きいようで、そちらにもとても力を入れているようです。
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【壁に並ぶ子供向けの工作キットとその作例、説明するメイさん】

 
 子供向けのキットには、シンプルなGROVEセンサー1つと、シンプルなGROVE出力1つを組み合わせることのできる制御ボードが入っています。なにそれかっこいい。

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 実は、あまりにも欲しかったので3日目に電気街で見かけたのでついつい買ってしまいました。金額は200元でした。200元出せば、例えばアクションカメラやスマートウォッチなども買えます。ということで、子供向けのキットは付加価値が高い商品として扱われていることがわかります。力を入れるのも納得です。
 
 Seeed内部を見学させてもらったのですが、「どこを写真に撮ってもいいよ」とのこと。そもそもオープンソースしか扱わない、というポリシーのため、作っているものなどを撮影されても全く困らないというのです。ここまできっちりとビジョンが固まっていると組織としては強いだろうな、と感じました。

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【とてもフレンドリーでオープンな雰囲気】

 

 

射出形成工場

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 Seeedさんも発注しているという射出形成工場に移動しました。この工場では「プラスチックなら何でもつくる」くらいの勢いで様々なデバイスの外枠を作っています。会議室に飾られた過去の製品の中にも見覚えのあるようなものも多く見られました。また、基本的にはお客様の製品を作っている工場なので、工作機械や工員などを撮影してもいいけれども、作りだされたプラスチック製品は撮影禁止、という注意がありました。
 
 過去に埼玉のおもしろ消しゴムメーカーのイワコーさんの工場に見学に行ったことがあり、射出形成の工程についてはある程度知識があったので説明があまりない中でも、何が行われているのか十分に理解することができました。
 
 この工場では、射出形成後の表面処理やシルク印刷、簡単なアッセンブル工程なども請け負っており、最終ラインでは半製品に近いようなものも見ることができました。こうして、少しずつできる工程を増やし、最終的な製品まで作り上げられるように工場を進化させていくのでしょう。
 
 この工場では、いわゆる4S運動のポスターなどが貼ってありました。見習うべきところは積極的に取り入れているとのこと。

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 工場では、中学卒業後から働く人も多いということ。何年も働いて早く熟練の職人になる方がいいから、とのことでした。深センの工場は、中国の様々な地域からの出稼ぎの工員も多く、若くして出てきているので、彼らのための住居を工場のすぐ近くに用意していることが多いそうです。住居や食事を工場側が用意したうえで、彼らの月給は6万円程度。衣食住のほとんどが用意されていることを考えると、ほぼお小遣いとして使える金額ですので、それなりの待遇だといえます。
 
 

PCB工場

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【工場の入口はこんな感じのところが多い】
 
 次に向かったのはPCB (プリント基板製造)の工場です。高須さんの本の中では、過去にツアーで行ったPCB工場は薬液が床まで溢れ液体に直接手を入れて作業している工員もいる、というような記述もあり、どんなことになってるのだろうと興味を持っていました。ところが、今回伺った工場はその時の工場とは違う工場。同じくSeeedからも発注をしているとのことですが、こちらは殆どの工程がきちんと機械化されています。大きなラインをいくつか通っていく工程でプリント基板がどんどん出来ています。本で見られたような前近代的な工程は全くありません。今回のツアーにはP板.comの後藤さんも参加されていたのですが、後藤さんも思わずうなるくらいの立派な工場でした。
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 ラインに掲げてあった計画表を見ると、ロット数500くらいから数万まで、結構幅の広い注文に対応しているようでした。Seeedさんからここに出しているのも比較的数の多いものだということ。もしかするともっと小さいロットは、それこそ高須さんの本に載っていたような手作業の工場で作られているのかもしれません。
 
 そしてこちらの工場でも見かけたのですが、工場の入口の門の開け閉めが自動化されていて、LEDがピカピカしながら開け閉めしてくれるのがちょっと未来感があってカッコ良かったです。
 
 

Day.2(4月14日)

 この日も雨の中スタートです。そろそろ食事が合わなくてお腹を壊してる人とかが出始めてますが、そんなにひどい人はいないみたいでした。僕は全く平気で、しかも味もとても好みだったので、この深センツアーは本当に食事はハズレ無しでした。
 
 また、街中で電動オートバイをたくさん見かけるのですが、どれもこれもとても年季の入っている雰囲気。聞いてみるとどうやら、昔からの原動機付きのオートバイをぶった切って電動オートバイに改造してくれる修理工場が多いとのこと。移動のバスから外を眺めていると、確かに修理工場をたくさん見かけます。中国といえばちょっと前まで自転車のイメージでしたが、深センは電動オートバイの街でした。免許も必要ないということで、とにかく多くの電動オートバイが走っていました。「安全」よりも「変化」を重視した街づくりの象徴に見えました。
 

 

ShenZhen Open Innovation Lab

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 とてもおしゃれな商業ビルの中に入っているこちらの施設は政府系のイノベーションスペースです。略して「SZOIL」。そして、実際には民間系の「FABLAB」とのダブルネームのメイカーズスペースです。今回のツアーメンバー約20人ほどが入ると一杯になるスペースですが、もう半分を今まさに作りかけていて、これから広くなるようです。

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【まだ半分は作っている最中】
 
 こちらでは、中国のメイカームーブメントについての全体的な説明を聞かせていただきました。気合が入ってることがよくわかりました。

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 こちらにおいてある工具、工作機械などを見ていると、あたりまえなんだけど結構多くのものが中国メーカー製。どの中国メーカーを買えばいいかを知るには、こういうところにおいてある工具・工作機械などを見ると参考になります。

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LeMaker

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 こちらはBananaPiなどを作っているスタートアップメーカーです。学生と大学の教授3人で起業し、最近HUAWEIが資本参加した、という成長を感じるスタートアップで、社員数も80名近くになるとか。

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 今は自転車のスポークにつけるPOVをクラウドファンディングに出す準備中とのことで、「ドヤ」とばかりにピカピカのデバイスを自慢してくれるところが、やっぱりモノづくりやってる人はどの国でも同じだなぁ、とほっこりとした気持ちになりました。

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【Photo by Tsubasa Yumura】

 

 このLeMakerが入っているスタートアップ団地みたいな場所には、面白いモノがあった。メイカーのためのアパートというか、メイカーのためのホテルというか、世界中のメイカーの人がここに来た時に寝泊まりする場を提供しているらしい。こういうのもエコシステムの一つだよなぁ、と感心しました。

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 例えばDMM.make Akibaに遊びに来た人がいたとして、東京で安く仮の住まいを見つけるのはなかなか困難です。メイカーが安心してモノづくりに集中できる仕組みは作りたいですね。

 
 

MakeBlock

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 ご存知MakeBlockさんです。ここは来てみたかった。アルミ製のモノづくり用ブロックキットを作るメーカーさんですが、それを使うハッカソンを開催、その中でよく出来たものを次のキットとしてクラウドファンディングする、と言ったような拡大再生産スタイルの展開をしています。

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 オフィスを尋ねると、受付の横はひたすらMakeBlockを使った作品の展示。見ているだけでワクワクしてきます。

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 高須さんが弊社のV-Sidoの紹介をしてくれると、早速エンジニアの方を連れて来てくれ、またその人が別のエンジニアを連れてと、あっという間にエンジニアに囲まれて、アクチュエーター談義に。今サーボモータを使ったものを作りたいのだけれど、こういった問題があって、この問題をV-Sidoは解決できるか?といった具合に具体的な質問が飛んできます。こういった「チャンスを逃すまいとするスピード感」は、MakeBlockに限らず、深センのハードウェアスタートアップから強く感じました。
 
 僕個人としては、気づかないうちにMakeBlockでリニアベアリングモジュールが出てた事を知ったのが大きな収穫でした。
 
 

JENESIS

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 日本人の藤岡淳一さんが経営する、主に日本向けのガジェットの製造を行っている会社です。製造のみならず、技適などの申請を行ったり、アフターサポートの代行など、日本企業が必要とするサービスをワンストップで提供しています。藤岡さんご自身も、KDDI∞ラボのメンターをしていらっしゃったりしますので、ご存じの方もいるかもしれません。
 
 こちらでは主にタブレットの製造ラインを見せていただきました。「日本企業向けは箱の中に髪の毛1本入ってるとダメ」ということで、日本向けのクオリティ要求をよくご存知です。

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 工場のラインの見学も非常に面白かったのですが、その後藤岡さんから聞かせていただいた、色々なお話が(裏話も含めて)とても面白かったです。
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曰く、
  • ハードウェアスタートアップは原価5,000円のデバイス1,000台位からのスタートであれば500万くらいでできるので、そのくらいでできることがないか考える
  • この工場では最小ロット1000台くらいから受け付けているが、基本的には有りものの流用でできるようなアッセンブリ。金型を起こすようなものであれば、やはり2万くらいのオーダーで考えるべき
  • 最初に相談してから、有り物の流用であれば3ヶ月とか、新規で起こすならどんなに短くても半年以上はかかる
  • 人件費が上がってきて(数年くらい前から見ると1.5倍とか)、安くなくなってきているので、仕事が減り潰れる工場も多い
  • 中国の工場は春節前に夜逃げするところが多い。そのタイミングで主に従業員への支払いが多くなる上、売上が下がるので、従業員に支払いをしないタイミングで逃げる
非常に勉強になるお話をたくさん聞かせていただきました。
 

Day.3

 この日は向かう先がホワチアーンベイ周辺で、午後は電気街での自由行動となっていましたので、バスではなく徒歩での移動です。

 

 そういえば気候なんですが、4月半ばですが、半袖でも十分かな、くらいの暖かさです。でも、例によって建物の中はとても涼しくなっていたりするので、1枚羽織るものがある方が良いかもしれません。また、結構湿気がありますので、長ズボンは結構べたつきます。会社訪問じゃない時はロールアップして、晩ごはんの時は半ズボンで、と調整をしました。また、雨が非常に強く降ることもあるので、靴はある程度雨に強いものを選ぶか、複数用意したほうが良いかもしれません。現地の人は結構サンダル履きで街を歩いていました。
 

SEG Maker+

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 ガジェットや電子部品が大量にあるショッピングセンターの上層階にあるメイカーズスペースです。DMM.make Akibaの12階のBaseみたいな雰囲気のスペースです。ここには実際のメイカーズの方も結構いらっしゃっいました。

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 2チームほどが、ロボット組み立てキットの製品化を目指していました。そのうちの1チームは、まるでMakeBlockのようなプロダクトで、ここにも、ニーズのあるプロダクトをすぐに模倣して次のプロダクトを作っていくという素早い流れが見て取れます。

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 また、工作室においてある機械などに前日訪問したSZOILのステッカーが貼ってあります。疑問に思って聞いてみると、深センではメイカーズスペース間の連携が結構できていて、相互送客しているとのこと。深センには大小多くのこういうスペースがあるそうですが、シェアの取り合いをするのではなく、連携して進めていきたい、というような事をおっしゃっていました。
 東京においても、DMM.make Akiba、TechShop、Makers' Baseなど幾つかのスペースがありますが、それぞれで有償研修受けなくちゃいけなかったりして、ある程度共通化してもらえたりすると使いやすくなるなぁ、などと思いました。
 
 このビルの下にはMakers' Cafeというスペースが有り、コーヒーなどを飲めるのですが、そこで先日のSeeedさんの教育向けキットが売っているのを発見。思わず購入してしまいました。欲しい方はここに行けばあるかもしれません。

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HAX

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 ハードウェアアクセラレーターであるHAXさんに来ました。MakeBlockはここの卒業生の一つ。Haxlr8rという名前から最近HAXに変更になりました。深センを中心に行っているアクセラレータープログラムと、サンフランシスコを中心に行っているブーストプログラムの2本立て。アクセラレータープログラムの最中だったのか、ブースには非常に多くのチームがいて、ものすごい熱量。鬼気迫る雰囲気で作業を続けています。見てみるとアジア系だけでなく色々なチームが参加しているように見受けられました。
アクセラレータープログラムは、参加するチームはメンバー全員が深センに来て111日間集中してプロトタイピングをし、その間にマーケティングや流通の勉強なども行うというものです。密度の濃い体験ができそうです。
 
 HAXの卒業生は、先ほどのMakeBlock、日本からSASSOR、IoTボードParticle、スマホでコントロールできるLED電球Yeelink、最近出荷されたArduboyなんかが僕的には有名ドコロ。

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 いつでも世界中から受け付けてるよ、ということで、世界に向けたデバイス作りたいなら、まずはHAXに挑戦してみても良いかもしれません。
 
 

電気街でのお買い物

 電気街はとても広いです。秋葉原ヨドバシカメラのようなビルの中にラジオデパートの中の店舗みたいなのがギュウギュウに詰まってるのが何棟も何棟もある、というと凄さがわかってもらえるかもしれません。
 そして、建物ごとに若干の色があったりします。前述のLEDフロアがあるビル、山寨(シャンザイ)と呼ばれるいわゆるパチモノ携帯に強いビル、VRゴーグルなどスマホ周辺デバイスに強いビル、スマートウォッチばかり大量にあるビル、工作機器ばかりおいてあるビル、ホバーボードやドローンが多いビル。

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【こんなお店がビルの2フロアぎっしり Photo by kaori k】

 

 そもそも量が多すぎる上に、非常に迷いやすいので、正直数時間で一通り回るなんて不可能です。今回はツアーで、しかも何度か参加している方もいるので「こういうのに興味があります」と相談するとそこに連れて行ってもらえたのでかなり効率的でした。
 
 しっかし、何度か来ている人たちは、おもしろグッズを探すのがとても上手です。その日の夕食時にみんなで釣果報告をしたのですが、とんでもなく面白いデバイスを皆さん仕入れていらっしゃる。中でも高須さんは飛び抜けていました。一週間くらい、電気街をうろちょろし続けたいなぁ。
 
 僕は、GoProのようなアクションカメラを探してみました。4Kアクションカメラの最新ファームウェアのものが、230元(ちなみに、交渉上手な方と一緒に行っていたので安かったのだと思います)ざっくりと4,000円ちょっとくらいで買えました。帰国後秋葉原の某所で同じものを見かけましたが、およそ1万円ほどの価格でした。こういった商品の価格感はそんな感じだと感じました。
 
 アクションカメラやスマートウォッチ、タブレットスマホ用VRゴーグルなどは、深センでは既にコモディティ化したものです。こういったものは非常に種類が多く、また価格もとても安いです。スマートウォッチなんかも200元くらいで非常に多くの機種が売っていました。逆に、多すぎてとても選べません。行く前は「見たことないようなものがいっぱいあったら、目移りしちゃってめっちゃ買い物しちゃいそう!」と思っていましたが、あまりに種類が多く当たり前に売ってるものだから、不思議なことに、なんか見ているうちに逆にありきたりに感じちゃって、こういったものにあまり食指が動きませんでした。
 
 MicroSDカードも何枚か買ってみました。SanDiskバルク品SanDiskのパッケージ品などを買ってみましたが、どれも本来の速度が全く出ませんでした(ちょうど同じ正規品を持っていたので比較できました)。とくにパッケージ品の方は猛烈に書き込みが遅い上、あっという間に書き込みができなくなってしまいました。こういうものを買うのは難しいですね。
 
 深センでは、とにかく多くの製品が出回りますので、毎日フルカラーの広告紙が発行されています。日替わりでちょっとした特集が組まれており、今日はスマートウォッチ、今日はQi給電、今日はタブレットのモジュール、といった具合です。こちらの広告紙、メイカーズスペースなどではバックナンバーをよく見かけたのですが、どこで手に入れられるのかはわかりませんでした。

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店頭ではほとんどスペックの説明などありませんから、こういったものを事前に見てチェックしておくと良さそうです。
 

Day.4

日本への帰国日です。
 
 思ったよりも地下鉄を使わなかったので、深圳通(シェンジェントン)にかなりの金額が残ってしまっています。ウェブで「市内のコンビニ等の店舗でも使える」という記載があったので、スターバックスやケンタッキーを始め、色々な店舗で試してみたのですが、ほとんど使うことができませんでした。地下鉄で国境の町まで着いた際、そこにあるセブンイレブンで聞いてみたら「使えるよ」ということだったので、そこで飲み物やお菓子などを購入してチャージをほぼ空にしました。
 
 そういえば、コンビニでは日本のお菓子も結構目にしました。「優の良品 AJI ICHIBAN」と日本語で書かれたお菓子のチェーン店もよく見かけます。「優の良品」は日本企業かと思いきや、香港の企業だそうです。空港を始め、色々なところでお目にかかることができます。
 
 
さて、ここからはテーマ別に少しまとめてみたいと思います。
 

ICT環境について

 御存知の通り、中国本土には金盾と呼ばれる情報統制システムが有り、Great Firewallによって中国国外からの情報は極めて限られています。FacebookTwitter等のSNSは基本的に使えませんし、Googleのサービスも使えません。ですから、基本的には中国国内で展開されているサービス(当たり前だけどほとんど中国語)を使うか、VPNサービスを利用するか、となります。
 
 海外へは複数人で行くことが多いですし、PCなどでも利用したいので、いつもレンタルWiFiルーターを借りて行ってます。今回もいつもと同じ、GlobalWiFiでレンタルしていきました。
 2カ国以上またがった利用だと金額が高くなりますので、今回香港経由で深センに入りましたが、香港では利用しない、と言うつもりで中国国内用のレンタルです。香港でも、空港にはフリーWiFiありますので、必要ならそこで繋げばいいでしょう。
レンタルWiFiルーターはガンガン使っているとバッテリーが1日持ちませんので、レンタルの備品としてもモバイルバッテリー入っていますが、ANKERの大きめのモバイルバッテリーを携帯しました。WiFiルータースマホを充電しつつ、大体これで1日もちました。
 
 現地でのツアーメンバー連絡用には中国で極めて普及しているWeChatを利用しました。中国版LINEみたいなサービスなんですが、ペイメントサービスや無料WiFiスポットの提供など、とにかく街のいたるところでWeChat文字を目にします。深圳通(シェンジェントン)が使えなかった様々なお店でもWeChat Payは利用できますし、個人間送金なども簡単に行うことができます。また、公共料金の支払いなど、公共サービスの利用もWeChatからできたり、病院の予約(しかも、科や医師の指定なども)、タクシー配車などもこのアプリ1つでできます。インフラの一つとして着実にサービスメニューを増やしている感じです。

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 僕達日本人にとって中国のサービスはあまりお目にかかる機会がありません。また金盾などの事情もあり、中国のサービスは中国国内で閉じていることも多そうです。人口もあれだけいて、成長基調にありますので、わざわざ海外に出る必要もないのかもしれません。ですので、中国のICTサービスを知る機会は少ないのですが、現地に行ってみると、とても機能が豊富で使いやすいことに気付かされます。日本よりも進んでいることも多くありそうです。このあたりは一度真摯に受け止め、現在の中国国内のメジャーなICTサービスなどを研究してみる必要もあるかもしれません。
 
 そして、いつものLINEやFacebookが使えないのも困りますので、VPNも用意しました。今回は有償のインターリンクのセカイVPNを選択しました。
 
 一応、バックアップに無償のVPNの設定も入れておきましたが、結果的には使いませんでした。(使えませんでした)
殆どのシーンでセカイVPNはうまく機能してくれましたが、夜21時~翌1時くらいまでは非常に混み合って接続ができないことも多く、また接続できても速度が殆ど出ないこともありました。こういう時は無償のVPNサービスなんかはもっと悲惨な状況ですので、全く利用できません。
 
 特に、出張中もメール見たり仕事したりしたい場合は、VPNは必須だと思いますので、しっかり準備する必要がありそうです。なお、VPNなしの場合、Gmailにはアクセス出来ませんでしたが、Office365にはアクセスできました。
 
 

モノづくりのエコシステムについて

 
深センでの「モノづくりのエコシステム」とはどのようなものでしょうか。
 
 深センでは世界中のメーカーの様々な製品が作られています。とても良く売れた「ヒット商品」が出ると、それを真似た金型が作られ(場合によってはそのまま流用されるのでしょう)、しばらくするととても良く似た筐体を簡単に買うことができるようになるのだそうです。また、その筐体にピッタリ入る基板をまた別のメーカーがー作って、結果的にそれを組み合わせて、ヒット品にとても良く似た製品をつくり上げるのが定番のパターンとなったりするそうです。
 これを「パクリ」の一言で片付けることももちろんできるのですが、別の観点から考えると、ヒット商品が出た後、それを模倣した様々なパーツが深センというマーケットでシェアされ、誰でも入手できるようになることで、それらのパーツを使った多くの商品が生まれてくる、そんな流れとして見て取れます。その背景には彼らの中にある「模倣をよしとする」文化があります。模倣し、それが共有され、その中で勝負していく、そういう考え方です。
 
 深センのエコシステムの活性には「ヒット商品」が欠かせません。ヒット商品が出て、その作り方さえわかってしまえば、模倣そして共有により一気に深セン全体そして世界へと商品は流れます。その「ヒット商品」は、かつては深センに製造を発注する深センの外の企業によってもたらされました。ヒット商品を生み出すにはお金がかかります。その部分を外部に依存していたということです。しかしながら、人件費が上がるに従い、深センを単純な製造工場として見た場合の魅力は徐々に薄れてきます。実際、JENESISの藤岡さんによると、より安価な場所に徐々に移ってしまっているそうです。とすると、ヒット商品は深センではないところで作られ、深センにその作り方が入ってこない可能性が出てきます。これでは深センのエコシステムが回らなくなってしまいます。
 そこで必要になったのが「ヒット商品自体を深センから生み出すこと」であり、そのためのメイカー支援政策です。
 
 そんな流れをよく示しているのがSeeedです。モノづくりのより川上に関わるための、プロトタイピングのためのモジュール群の提供、小ロットの製造のためのPCBサービスを展開、そして高付加価値の商品を生み出すためのSTEM商材の開発、どれをとっても深センの今のステージを表しています。
 
 

ロボットについて

 深センではあまり多くのロボットに出会えませんでした。ただ、店頭にUBTECHのAlpha1が居たので、実機に触れてとても嬉しかったですけれども。

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【なぜかいつもVRゴーグルと一緒にいるAlpha1 Photo by Emi Kato】
 
 トイレベルのものはそれなりにありましたが、目新しい物は見つけられませんでした。また、深センといえばドローンのDJIの本社があることでも有名です。同じく店頭ではトイレベルのものばかりでした。まだ爆発的なヒットと言えるようなベースのものが出てきていない段階なのかもしれません。
 
 しかし一方で、STEM教材としてのロボットについては興味が高まってきているようでした。STEM教材は付加価値の高い商品になりますので、特にtoCのし上において、ここに注目が集まるのはよくわかります。STEM教材の中で、次のヒット作が生まれ、サーボモーターの需要と経験が深センに溜まってくれば、ロボット製品が一気に増える可能性も考えられます。

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 先ほどの、ヒューマノイドロボットAlpha1のメーカーUBTECHも最近STEM教材向けのJimu Robotを発表しました。

http://www.ubtrobot.com/en/html/archive/2015102069.html

もしかすると、これから本当に深センで製造されるロボットが増えてくるかもしれません。
 
 

このツアーについて

こういうツアーって、本当に良いと感じました。
 
 まず、色々な立場の人がある程度の人数が集まっているので、企業訪問、工場見学などをお願いしやすく、個人で行くことに比べて色々なものを見たり体験したりすることができます。すでに過去数回実施しているので、ある程度先方との関係ができているのも大きいと思います。
 
 そして、参加している人がバラエティに富んでいるので、専門的な知識のフォローをしていただけたり、色々な視点からの意見が聞けたりして、これも単独で行くよりも多くの学びを得ることができます。
 
 そして、同じタイミングで同じものを見た参加者同士は、ある程度価値観を共有できる仲間になれる、ということです。
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【JENESISでの記念写真】
 
 1つ目のメリットは行く前からわかっていたのですが、意外と2つ目、3つ目のメリットも大きいのではないかと思います。
 
 

最後に

 今回ツアーに参加して、あらためて「百聞は一見にしかず」という事を痛感しました。一番感じているのは「危機感」です。どこかで「日本はいろいろな面で世界の中で飛び抜けて進んでいる」と信じていたことろがあるのですが、色々な国に行くにつれ、その思い込みは危険だぞ、と感じています。特に「中国なんてねぇ」とどこかで思ってたりするのなら、おそらく大きな思い違いをしています。「熱心に働けば経済が成長し、豊かになれる」という日本でもほんの数十年前にあったのと同じような環境が現在の中国にはあり、多くの人が本当に熱心に学び、働いています。変化し続けています。そんなことを感じることができる、そんなツアーでした。