子ども向けScratch講座のお手伝をして気づいたこと
立川にあるChika-ba[ちかば]で開催された子ども向けのScratch講座のお手伝いに行ってきました。
子どものための 「スクラッチ」 ('14.10.4) | Facebook
今まで、娘に教えたり、あと勉強会の様子を見てたりしたことはあったんだけど、しっかりと教える側のお手伝いをしたのははじめて。はじめてなりに気付きとかがあったのでまとめてみる。
「できた」に大人も子どももない
まず最初に思ったこと。今回子供だけじゃなくて親御さんも一緒にScratchの学習をしてたんだけど、大人も子どもも難易度も関係なく、一つ作業ができた時の「やった!」という気持ちは同じ。喜ぶ顔も、みんな子どもみたいな顔してました。
新しいことに挑戦して、それが上手くいったときの気持ちは同じなんだなぁ、と改めて気が付きました。大人になるとだんだん「新しいこと」自体が減っていたり、「新しいこと」に挑戦しなくなったりしちゃうのかもしれないけど、やっぱり「新しいこと」にはどんどん挑戦してみる方がいいんじゃないかと思いました。
そして、新しいことに挑戦するには実は、大人も子どもも同じようなやり方がいいんだろうな、とも思いました。大人の方がちょっと難しい言葉でも理解してくれたりはするけど、小さな「できた」の積み上げが大切ですね。
3Dであることが当たり前になってきてる
「なんか平面的」「奥に行ったり手前に来たりみたいなことがしたい」こんな声が出てきました。僕達は二次元のゲームなんかに慣れてたけど、今の子供達は奥行きを感じるようなコンテンツに慣れてきてるのかな。
Scratchは完全に2Dの世界観なので、三次元表現をしようと思うと色々工夫が必要。それこそ僕が子どもの頃に擬似3Dのゲームを作ったような手法が必要になる。重ねあわせの順番、大きさのコントロールとか。昔のゲームは「多重スクロール」で奥行き感のコントロールしてたなぁ。
Scratchでその辺をやろうと思うと、[見た目]の[前に出す]や[◯層下げる]を使って重ねあわせのコントロールが必要。スプライトの数が多くなったら大変だ。
ところで、この2つのブロック、「前」と「層」、「出す」と「下げる」と、概念が違った言葉になっちゃってるので、この2つが対応してることがわかりにくかもしれない。
自分で描いた絵は楽しい
はじめから準備されてるScratch Catもかわいいし、すぐ使えるから楽しいけど、やっぱり自分で描いた絵が動くと楽しい!愛着がある方がやっぱり楽しめるみたい。
ただ、自分で絵を描くってのは、いくつかのハードルがあるな、とも。
- ノートパソコンを使ってる事が多いけど、タッチパッドでは自由に絵が描けない。マウスを用意しておいた方がいい。ペンタブレットやタッチスクリーンなら最高!
- 絵を描くことだけに夢中になってしまう。絵を描くことそのものが楽しいから。
- でも逆に絵を描くことを苦痛に思う人もいる。パソコンだと難しいと感じる人もいるし。描かなくてもいいという自由もあった方がいい。
うまくお絵かきの時間を入れれるといいな、と思いました。始める前に早く来た人から先に自分で絵を描く時間にする、とか。
[…と言う]のウケが良い
今回、子どもは女の子だけだったし、お母さんの参加もとても多かったということもあって、女性にその傾向があるのかもしれないけど、[…と言う]のブロックでキャラクターに喋らせると、とても楽しかったみたい。
僕はとても男子的に「ドカーン」とか「ズドーン」みたいな方が楽しいし、キャラが喋っても「ふ〜ん」な感じなので、これは新しい発見。逆に言うと男子的すぎるコンテンツは女子には不評なのかもしれないなぁ。
ただ、この[…と言う]は応用が難しい。「しゃべった!」で楽しいあと、それを使った遊びをしようと思うと、複数スプライトの掛け合いでメッセージの送受信を覚えるか、[…と聞いて待つ]と[答え]を使った変数の考え方を身につける必要がある。メッセージも変数も、実生活の中で使わない概念なので、それらを身につける別のプロセスを踏んだほうがいい。
ということで、喋らせる前に、変数かメッセージを理解するようなプロセスを入れたほうがスムーズに進むかもしれない。
色々な方向性への興味、という意味では、先日も紹介した阿部さんのこの本が、小学生が興味を持ちそうなテーマを教科別(強化というほど厳密じゃないけど)に載せていて、面白いなと常々思っている。今回の講座のお手伝いの前にも復習としてもう一度読み返しました。
マイナスの数値が難しい
マイナスの数値というか、マイナスによる概念の逆転が難しいというべきか。[大きさを◯ずつ変える]のブロック、スプライトを大きくしたり小さくしたりできるブロックなんだけど、初期数値の10だとどんどん「大きく」なっていく、数字がマイナスになると「小さく」なっていくんだけど、これを理解するのにとても時間がかかっているようだった。「小数を使うの?」という声も聞かれたんだけど、確かに掛け算を使う場合は小数を使うと数値が小さくなるけど、この場合は小数じゃない。この辺りは、慣れなのかもしれないし、[大きさ]という変数の概念がはっきりしてないからかもしれないけど、理解を助ける必要がありそう。
Scratchではせっかく変数が表示できるので、[大きさ]を表示させつつ、[大きさを◯ずつ変える]をクリックして表示上の大きさと、[大きさ]変数の値との関係なんかを見たりすると良いのかもしれない。
内容、進度は個別にすべきか
あとひとつ難しかったのが、今回参加してくれた内の一人は、既に同様のカリキュラムを一度体験していたこと。同じ内容だとつまんないんじゃないか、と思って、応用課題を用意してたけど、「みんなと一緒にやりたい」と。その気持よくわかる。
でも、やっぱり進めていくと、一度やったところだから応用がしたくなってきて「これをこういうふうにしたい」という気持ちになってくる。でも、そうやって他の人と違うことをやってると、他の人達が次のステップに進んだ時に、やっぱりそっちも一緒にやりたい、という気持ちも出てきちゃう。行ったり来たりになって、なんとなくどっちつかずな感じに。
当然、ひとりひとり感じ方が違うだろうから、基本的には「臨機応変」なんだろうけど、見てる限りでは、基本的には同じことをやる方向ではじめて、興味が広がってきたら、はみ出すことを積極的に認めてあげるって方向かな、と思う。そうなると、子ども一人に一人のアシスタントがいる、ってのが理想になりそう。なかなかそうも行かないかもしれないけど、講師以外にアシスタントが居ないとなかなか難しいんじゃないかと思った。
教え合いの可能性
上の話とも関連するのかもしれないけれど、進度が早い子が、他の人に教えてあげるというシーンが結構見られた。子どもが親に教えるとかね。こういう学び合いの形はとてもいいと思う。講座とかだとどうしても講師から受講者への一方通行になりがち。受動的な態度になると、一気に学習効率も落ちる。知ってる人が他の人に教えてあげる、ということが上手に使えれば、参加度も増すし、何と言ってもアシスタント不足とかを補える。Pay Forwardだね。
同じレベルの受講者を集めてもいいけど、色々なレベルの受講者がいればこういうこともできるわけで。「講師が教えます」じゃないスタイルのイベントが作れるかどうか。思うに、突発的なイベントではなく、「場」としてどう作っていくのかがテーマかな、と思った。
ということで、色々な気付きをもらいつつ、参加者のみなさんと一緒に楽しくできたから、いいイベントでした。